S#8ただいま、おかえり
近所でも有名なちょっと怖いおじさんがい た。白発混じりの武将費でいつも眉間に シワを寄せて通りすがりの子供が こんにちはと声をかけても返事をしない。 私は小学生の頃そのおじさんの前を通るの がちょっと怖かったけれど中学生になって からある変化に気づいた。ある日その家の 前でチャトラの子猫を見つけたのだ。その 子猫は玄関の前にちょこんと座り、ドアが 開くのを待っていた。そしてドアが開くと ひょっこり現れたのがあの怖いおじさん ところがお帰り。寒かったろ。おじさんが 猫に話しかけた。猫はにゃーと返事して おじさんの足元をすりスりしながら家の中 に入っていった。驚いた。あの不合そうな おじさんが猫にだけは笑顔を見せていたの だ。それからというもの、私は毎日観察 するようになった。晴れた日は縁側に座っ ておじさんの膝に乗る猫。雨の日はタオロ で猫の体を吹いてやるおじさん。スーパー の袋の中から猫用のおやつが見えることも あった。私がこっそり声をかけたのは そんな日を見て半年が経った頃だった。 その猫買ってるんですか?おじさんは少し 驚いた顔をした後、ふっと笑っていや、 こいつが勝手に住みついただけだよ。でも まあ帰ってくると安心するなと照れそうに 言った。それからおじさんと私は少しずつ 言葉をかわすようになった。お学校、 ただいま。それだけの短い会話がなぜか 温かかった。季節が巡って私が高校を卒業 する。久しぶりにおじさんの家の前を通っ た木、猫の姿が見えなかった。気になって 声をかけるとおじさんはぽつりと言った。 昨日静かに眠ったよ。胸が締めつけられた けれどおじさんは続けた。あいつが来て から誰だが待っててくれるってこんなにも 心が救われるんだって知ったよ。そう言っ て私の方を見た。ありがとうな。お前が声 をかけてくれてから俺もちょっと変われた 気がするよ。私は少し涙をこらえながら 笑っていった。うん。私も猫ちゃんに会え てよかった。今ではおじさんの玄関前には 小さな猫の置き物が飾られている。隣には ただいまお帰りと掘られた木のプレート。 あの猫はただの迷い猫だったのかもしれ ないけれどその小さな命が1人の人の心を ほぐし他人との関わり方を変えてくれた。 そんな奇跡のような時間が確かにそこには あった。私が今ペットショップで子猫を 見つめながら思うのはただ1つ。また あんな出会いがあると言い
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S#8ただいま、おかえり
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